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高知地方裁判所 平成9年(ワ)398号 判決 1997年12月15日

主文

一  本件訴えを却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

一  原告は、左記のとおりの判決を求めた。

1  原告と被告らとの間の昭和五八年五月二八日付け連帯保証契約(主債務は原告とAとの間の同日付け信用保証委託契約に基づく債務)に基づいて、被告らが連帯して原告に対し金一九二万二七四七円及びうち金五九万一四〇〇円に対する平成九年一一月一日から支払済みまで年一二パーセントの割合による金員を支払う義務があることを確認する。

2  原告と被告らとの間の昭和五九年一一月一三日付け連帯保証契約(主債務は原告とAとの間の同日付け信用保証委託契約に基づく債務)に基づいて、被告らが連帯して原告に対し金五〇六万六八一一円及びうち金一四七万七一四二円に対する平成九年一一月一日から支払済みまで年一二パーセントの割合による金員を支払う義務があることを確認する。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  原告は、左記のとおり、請求原因事実を述べた。

1  別紙「判決」<略>の請求原因事実部分(同判決の「事実及び理由」の第一項の1ないし3)と同旨

2  原告は、昭和六二年、本件原告を原告とし、本件被告ら及びAを共同被告とする高地地方裁判所昭和六二年(ワ)第四〇七号求償金請求事件を提起して、別紙「判決」<略>の主文第一、第二項と同旨の判決及び仮執行の宣言を求め、右1と同旨の請求原因事実を主張した。

右事件については、昭和六二年一〇月二八日、別紙「判決」<略>のとおり本件原告の請求を全部認容する判決が言い渡され、同判決は本件被告Pについて同年一一月一七日に、本件被告Qについて同月一四日に、Aについて同月二一日にそれぞれ確定した。

3  その後、本件被告らは、原告に対し、昭和五八年五月二八日付け信用保証委託契約に基づく求償金債権(別紙「判決」<略>末尾添付の別紙(一)の債務)について、別紙「損害金計算書1」<略>のとおり弁済し、原告はこれを同別紙のとおり充当した。

また、本件被告らは、原告に対し、昭和五九年一一月一三日付け信用保証委託契約に基づく求償金債権(別紙「判決」<略>末尾添付の別紙(二)の債務)について、別紙「損害金計算書2」<略>のとおり弁済し、原告はこれを同別紙のとおり充当した。

4  しかし、右確定判決の主文第一項が支払を命じる金員のうち、左記のものが未払で残っている。

(一)  昭和五八年五月二八日付け信用保証委託契約に基づく求償金債権(別紙「判決」<略>末尾添付の別紙(一)の債務)のうち、

(1) 残元本 五九万一四〇〇円

(2) 最後の弁済があった日である平成九年一〇月三一日までに発生した遅延損害金の未払分 一三三万一三四七円

(3) 右(1)の残元本に対する右最後の弁済のあった日の翌日である平成九年一一月一日から支払済みまで年一二パーセントの割合による遅延損害金

(二)  昭和五九年一一月一三日付け信用保証委託契約に基づく求償金債権(別紙「判決」<略>末尾添付の別紙(二)の債務)のうち、

(1) 残元本 一四七万七一四二円

(2) 最後の弁済があった日である平成九年一〇月三一日までに発生した遅延損害金の未払分 三五八万九六六九円

(3) 右(1)の残元本に対する右最後の弁済のあった日の翌日である平成九年一一月一日から支払済みまで年一二パーセントの割合による遅延損害金

5  右のとおり、被告ら(連帯保証人)は右確定判決が支払を命じた金員の弁済を続けているものの、主債務者であるAは弁済しておらず、また、Aには、右確定判決に基づく強制執行の対象とすべき同人所有の不動産や債権等の財産もないので、右確定判決により認容された原告の求償金債権の消滅時効が完成する前に同債権の弁済を受けることは困難である。

6  よって、原告は、本件請求の趣旨(本件主文と同旨)どおりの判決を求める。

三  被告Pは、原告の請求を棄却する判決を求め、請求原因事実はいずれも認める旨述べた。

被告Qは、適式の呼出しを受けたにもかかわらず、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しないから、請求原因事実を明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす。

四  当裁判所の判断

1  請求の原因第2項は、同一当事者間において同一訴訟物について確定判決が存在する旨の主張であり、確定判決の存在は職権調査事項であって、弁論主義は適用されないから、右主張について自白の効力は認められない。

そこで、請求の原因第2項について判断する。甲第一号証及び弁論の全趣旨によれば、本件訴訟と当事者、訴訟物を同じくする高知地方裁判所昭和六二年(ワ)第四〇七号求償金請求事件について、昭和六二年一〇月二八日、本件原告の請求を全部認容する判決が言い渡され、同判決は本件被告Pについて同年一一月一七日に、本件被告Qについて同月一四日に、Aについて同月二一日にそれぞれ確定したことが認められる。

2  次に、右確定判決があるにもかかわらず、同判決と当事者、訴訟物を同じくする本件訴訟を提起して、新たな判決を求める訴えの利益があるか否かについて判断する。

原告は、被告ら(連帯保証人)が右確定判決の命じた金員の支払をごく最近まで続けていることを認めた上で、主債務者であるAの消滅時効完成が間近であり、その前に右確定判決が支払を命じた金員全額の弁済を受けることは困難であることを理由に、時効中断のため新たな判決を求めるもののようである。

確かに、連帯保証人に対する請求は、連帯保証債務についてのみならず、主債務についても消滅時効中断の効果を有すると解されるが(民法四五八条、四三四条、一四七条一号)、主債務の時効中断のためには、主債務者に対する請求など本来の手段が存するのであるから(民法一四七条)、本件訴訟の訴えの利益の有無の判断においては、被告らの連帯保証債務についてのみ、時効中断のため他に手段がない等々新たな判決の必要があるか否かを判断すべきであり、Aの主債務の時効中断の必要は考慮すべきでないと考えられる。

そこで、被告らの連帯保証債務について、原告が新たな判決を得る必要があるかを判断する。被告らによる別紙「損害金計算書1」及び別紙「損害金計算書2」<略>の金員支払(連帯保証債務の一部弁済)は、同債務の承認に当たると解されるので、これによって、ごく最近、被告らの連帯保証債務の消滅時効は中断されているということができるから、同債務の時効中断のため原告が新たな判決を得る必要は全くない。また、他にも、原告が新たな判決を得る必要があると認めるに足りる証拠は全くないから、本件訴訟には訴えの利益がないといわざるを得ない。

3  よって、本件訴えは不適法であるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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